Philosophy
【今を生きる】これが僕の哲学です。
僕たちは日々を懸命に生きている。一瞬、一瞬を積み重ねている。己が目指す境地があるのなら
それは「今」を積み重ねることでしか到達できない。それは自身の東日本大震災での体験があったからこそ感じ学んできた。
“今”ここに存在しているという一瞬に徹すること。その積み重ねが自身の道なのだと気付く。
時間の経過による風化だけはさせたくない。
必ず明日が来る。夜明けのように陽さす命の尊さと力強さ、感謝を絵画作品という世界に落とし込んでいます。
作品には日本特有の美学を反映しています。
「言霊」「武士道」「石紋様」とアートピースを分けて描き、全ての作品が円形キャンバスで統一され「心」を描いています。
円形キャンバスの「円」は「心の形」を表現したものであり日章旗を思い起こさせ太陽や月、
古来より人の生活に密接に関わってきたもの、そして和の心を私たちに連想させる。
アートピース全てに共通しているのは、作品に静寂を纏わせ心を落ち着かせる厳格さ。
禅の静かな表現を感じるとともに富士山系の火山岩を顔料として用いることで岩肌を感じる荒々しくも力強さもみれる。
そのシンプルで洗練された表現は、「侘び寂び」に通じると信じている。
絵画作品として作品を手がける。 作品に「静」と「動」とが弁証法的に成立している。
もうひとつ。全ての作品を想うとき侘び寂びに精通していると考えます。
「侘び」とは一つの美意識であり清楚で質素。質素であることの中に心の充足と美を求める思想。とされています。
精神性を重んずる日本人特有の美意識。僕自身が作品を追求する中で必ずといって言いほど感じる感覚がまさにこの「侘び」。
作品を構成するマテリアルもしかり描くコンセプトや構図も、究極の境地として追い求めている作品像もそう。
心に響く「美」こそ実はシンプルなのではないかと考えています。
そんな「侘び」作品では黒と金のみで描き上げる規律を持ち「敬意」を表現した作品です。
作品を構成するマテリアル、描き上げていくための技巧、道具、
そして作品を見てくださる目の前の人に向けた尊敬心や敬意。

Biography
早坂寿輝|Toshiki Hayasaka 1990年生まれ 宮城県仙台市出身。
2歳から水泳を始め21歳まで競泳選手として競技一筋の人生をすごし、2010年ロンドンオリンピック選考会出場。
大学在学中(当時20歳)に東日本大震災を被災。
果てしなく続く瓦礫の世界と全てを飲み込んだ水平線。灰色の雲が空を覆い、
切れ間から陽の光が差し込みが景色は今も忘れられず、自分がどこに居るのか、わからなくなるような感覚があった。
あの日、僕が立っていたのは 「命の気配」を一切感じることのできない異様な世界。
生と死の境。
日常の平穏が突如として崩れ去り、否応なく突きつけられた「死」の世界が“ 今 ”という“ 一瞬 ” を生きるための礎を、
僕の中に確かに刻みつけた。 この日からすべては今を生きるために。